グランクレストリプレイ
それぞれの闇、それぞれの光
GM:スイヒョウ
PLとPC
ガブリエル・エ・グリンホルン(Dusty 以下、ガブリエル
クリス・レヴィン(フール 以下、クリス
マリン・マージナル(マーシー 以下、マリン
ソラーレ(わかめ 以下、ソラーレ
セレーネー(副長 以下、セレーネー
アルトネリア・ディ・シリウス(青星 以下、アルト
舞台となる国家:ヴェルテュレーヴェ公国
礼儀、騎士道を重んじる。また、文明国でもあり食のバリエーションが多い自然豊かな国となっている。
国家としての大きさは小さいが、領主は民をいつくしみ、民は領主を敬っている。
しかしながら傭兵と騎士の対立が少なからずあるが、国王、また参謀のおかげもあり、
ある程度の間合いはあるが協力関係をとれている。
今回は小説風味、かつプレイヤー会話を盛り込んでいくスタイルでリプレイを書いてみました。
稚拙な文章となりますが、温かい目で見てもらえると嬉しいです。
シナリオ 「それぞれの光、それぞれの闇」
――――――――――――――――――――――
プロローグ
ここは辺境の地。混沌に飲まれ、狂い、廃れた土地。
ある時は火山の如き灼熱の世界に、またある時は全てが凍てつく極寒の世界に変わり、歩くどころか生きて帰ることすらできるか怪しい危険な場所。
そんな場所だからこそ、極秘の情報を交換するには…それも、「王の暗殺依頼」などということに関しては尚更良い場所だった。
そんな場所に、二つの人影がある。
それぞれ黒いローブを被り少しすれ違ったところで立ち止まる。
「……計画は?」
「順調…と言いたいけど、少し手間取ってねェ……」
二人は決して顔を合わせない。
しかし、会話を続ける。
欲に塗れ、濁り、溺れた声で。
「それは大丈夫なのか?この計画が失敗したら……」
「なァに、心配いらないよ。『とっておき』を用意しておいたから。」
低く、小さな嘲笑。
得体の知れない、不気味な笑い。
無垢な悪魔のように。
酷悪な天使のように。
ローブの1人は言葉を告げた。
「全て描いたシナリオ通りさ。」
――――――――――――――――――――――
「敵が既に本陣まで来ているぞ! 国王に近づけさせるな!」
「押せ! 狙うは国王の首だけだ! 潰せ!」
兵士の怒号があちらこちらで上がっている、敵がすぐそこまで来ているようだ。
私の首が飛ぶのもそう遠くない。 敗因……いや、原因は私達が気づくのが遅かったのだろう。 無念とは、こう言う事なのだな。
「殿下! 貴方だけでもお逃げください!」
「いや、諸君らは良くやってくれた。 私の事は放っておいて、生きのびる事を優先してくれ。」
なぜだ。何故皆殺しにする。……いや、もう手遅れだろう。 向こうでも何かあったに違いない。最後の約束だけは守ってくれているだろうか。
せめて死ぬ間際は友を信じることにした。
「わぁ…… 都会ってこういう所なんだな。……なにしろ人が多い」
ちょっと苦笑いしながら煙草に魔法で火をつける。後ろで括っている少し長めのエメラルド色の髪が隣を走って行く馬車が起こした風になびいた。
僕はソラーレ。魔術師なんだ。ちょっとかっこいい響きがするだろ? まぁそれが魔術師になった理由の一つでもあるんだけどさ。
僕はこのヴェルテュレーヴェ公国に専属魔術師としてメイジアカデミーから派遣されてきたんだ。いわば参謀役として国に派遣された訳だね。 メイジアカデミーでの成績は優秀だったし、ここでもなんとかなるでしょ。とにかく、僕と交代になるメイジと、この国の王さまに会わないと。
この国は僕が育った田舎とは違って街を歩くと、人が露店に集まり、レンガ造りの家の煙突から煙が上がっている。騎士達がパトロールをしているおかげだろう。治安は良く、人の笑顔で満ち溢れている。なんとも平和でいい国だ。下調べはしていたけどやっぱり国に行ってみないと内情はわからない。正直ヤバい国に飛ばされたらと内心ひやひやしていた。そう思いながら町のごみ箱に火を消した煙草を放り投げる。
城の前まで迷うことなく来る事が出来た。この国は小さい方だけど田舎育ちの僕にしてみれば全てが大きく見える。それは城も同様でメイジアカデミーの建物の次くらいに大きいんじゃないだろうか。
「お主は何者だ。ここはヴェルテュレーヴェ公国、王城なるぞ。」
「専属魔術師として派遣されてきたソラーレです。 これを。」
そう言って門番をしていた兵士の一人に書類を渡す。兵士は書類を確認し、通してくれる。
「おお、君はメイジか、私も昔は君のような……」
「あ、ありがとうございます。」
話が長くなりそうだ。
兵士の話は話半分に聞き流す。こういう事はあまり好きじゃないんだ。メイジなんだけどね。そうしてさっきの兵士に付き添われて王城の中へ足を踏み入れる。
思ったより王城は簡素、というより小綺麗だった。目立つものはシャンデリアくらいで。 ……まぁ豪華なのはあんまり期待していたわけじゃないんだけど。
前の専属メイジには道すがら会えた。優しそうなおじいちゃんだった。意外と書類の受け渡しとかは纏めてくれていたようで、メイジ専用の執務室にメモを残しておいてくれたらしい。あと、わからない事があれば昔からこの国に使えてるマリンというメイジがいるようで、その人に聞いたり、頼る事にしたらいいと言われた。
メイジにも色んな人がいる。これは僕の偏見だけど、ヤな奴の方が多い気がする。そう言うメイジの中では、ややこしい書類や難しいものは後見のメイジに全て投げだす人もおり、今メイジアカデミーでも問題となっている。ここまで丁寧にしてくれるこのおじいちゃんメイジが前のメイジで良かったと内心喜んだ。
おじいちゃんメイジと別れ、通路を歩いていく。後は王と話をしなければならない。隣を歩いている兵士の話はまだ続いているようで、終わる気配がない。
正直、うんざり……
――ふと、気配を感じる。 混沌だ。 間違いない。
「これはなかなか…… ヤバい感じだね……。」
ほんの微量だがソラーレは確かに感じ取ることができた。並みのメイジでは気付きさえしないだろう。ソラーレのメイジとしての技量がうかがえる。
「メイジ……いや、アーティストかな? 混沌の気配をここまで殺すってなかなかの芸当じゃない?」
ソラーレは気配の方を見る、するとかなり遠くに派手なゴスロリの服を着た金髪の小柄な少女がいるのが見えた。
「誰なのか確信が持てないし、謁見の間の方が近いな……すみません、急ぐ事はできますか?」
三階階の謁見の間では新しいメイジと対談するため首脳陣営、
ヴェルテュレーヴェ王、アルトネリア・ディ・シリウス
国王家庭教師兼臨時参謀、マリン・マージナル
騎士団『ペルセウス騎士団』騎士団長、ガブリエル
オルガノンでありガブリエルの聖剣、セレーネー
そして、この俺、傭兵団『鉄(くろがね)』団長、クリス・レヴィン
錚々(そうそう)たる面子が揃っている。ぶっちゃけ、俺はこう言う事に興味はない。俺達、いや、俺の仕事は汚れ仕事などのいわゆる裏仕事だ。確かに、クロガネは立派で伝統ある傭兵団でもある。小さいころから育ててくれたこの傭兵団と前団長には感謝しているが、こう言う面倒な場は嫌いだ。騎士団とかはちゃんと整列してメイジを待っている。が、俺は面倒だ。部屋の壁にもたれかかって窓から街の様子でも眺めている事にした。
……あぁ。平和だ。
三階とはいえ少し高いところからは平坦な街が結構見渡せる。その中にクロガネの一人が金槌を持って外を歩いているのが見えた。今は一部を除いて傭兵から商人や技術者となって街の発展に貢献している。いわば臨時傭兵だな。そういう連中は騎士団とも仲良かったりするし、各自の自由だ。咎める気もない。
しばらくして謁見の間の扉が開かれた。どうやらメイジ様のご到着のようだ。 面倒くせぇ。
――――――――――――――――――――――
ガブリエル:「ゴゴゴゴゴゴ」
クリス:扉のSEか(笑)
GM:それじゃ皆集まったなー。
全員:おー。
ソラーレ:なんかやばい奴いきなり出てきたんですが(笑)
GM:そんなこといざ知らず少し前に中庭で寝てたやつおったな(笑)
セレーネー:「ぐーぐー」
ガブリエル:「おいセレーネー?」
セレーネー:「ねむいのだー! 会議なんてめんどくさいのだー!」
ガブリエル:つまんで連れて行くか(笑)
GM:という訳で皆は新しいメイジが来ると聞いて謁見の間で自己紹介をするためにここに来ました。傭兵団長がいるのはおかしいかもしれんけど、一応戦争やそれに準ずるスパイ活動ではコイツが必要から呼ばれてます。
GM:それでは皆自己紹介よろしくー!
全員:はーい
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相変わらず礼儀がなってない奴だ。
俺はクリスをちらりと見て王に聞こえないように軽く舌打ちをした後、新しく来られたメイジの方に向き直った。鎧と鎧がかすれて音を立てる。
「初めまして。私は騎士団長のガブリエル。この国に使える騎士です。 貴方がメイジアカデミーから派遣された例の。」
「はい。 メイジアカデミーから派遣されたメイジ、エレメンタラーのソラーレです。」
少し俺より若いくらいか。どこか飄々としているが、それでいて隙があまり感じられない。メイジ。その言葉があまり似合わない男だった。
「これから宜しくお願い致します。」
「宜しくお願いしますね。」
私はこの礼儀を重んじる文化が好きだ。騎士道にも通じているところがあり、礼には礼を。この国を保てるのもこの文化によるところが大きいのかもしれないとふと考えた。
「クリスだ。名前だけ覚えておいてくれ。」
奴が片手を上げて挨拶をしている。よくもまぁこの礼儀を重んじる国でそんな真似ができるものだ。怒りが湧き上がってくるが殿下の前だ。堪えることにする。
「ん〜 自己紹介すればいいのかー? セレーネーなのだー……ぐぅ〜」
外見は寝ぼけ眼で呆けているただの少女にしか見えないが、こいつはオルガノン、俺の剣でもある。たまに王の遊び相手となっているが、戦場に出ると一騎当千の働きを見せる。
セレ―ネーも手を焼く人物の一人だ。少女だからと言って城から連れ出すと離れるのはいやなのだーとか言って戻ってくる癖に城の色んな所で立ちながら寝る。オルガノンの性なのだろう、と殿下が城に居させてもいいと仰っていただいたので真に不憫ながら連れてきている。礼儀の作法とかを教えているのだが見習うつもりはないようだ。殿下に面目ない。
とりあえず蹴って起こす事にしておいた。
ついでにその隣で寝ている青年も蹴っておいた。
「な、なんじゃ? もう来たのかの?」
もう昼と言うのに寝癖の付いた髪を掻きまわしながら魔術師の恰好をしたマリンが外見に見合わず全てを知っているような深く澄んだ碧の瞳をこちらに向ける。よく寝るのに目の下にできるクマだけが白いもち肌と目に似合わず、印象的だ。
この爺言葉の青年(に見えるのだが……)はアルトネリア公の家庭教師兼国家参謀としてここにいるのだが、俺はこいつの年齢を知らない。昔から姿形がおんなじような気がするが、本人は「褒めてくれておるのかの? 嬉しいのー」などと言って誤魔化す。正直有能ではあるのだが、底が知れない。
「おぉ、アカデミーから来たソラーレ君か、わからん事があったら聞くといいぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
「それでなソラ殿。……」
「え、僕ですか?」
マリンがソラーレ殿に色々話しかけているがソラーレ殿は若干引いている。無理もない。あれだけ爺言葉で声が若く、ハイテンションなんだ。とりあえず次の兵士達に挨拶をするよう促した。
一通り挨拶が終わったところでガブリエルは五〜六歩、私の方に近づき跪く。
「アルトネリア公。」
「ありがとう。……私がヴェレテュレーヴェ公国国王、アルトネリア・ディ・シリウスです。 遠路はるばるお越しいただきありがとうございます。 ご覧の通り、なかなか個性的な人材に恵まれ、我が国は成長し続けております。 どうか、これからの発展に協力していただけると助かります。」
「いえいえ、こちらも宜しくお願いします」
はぁ。緊張した。私は本来こう言う事に向いてないんです。
どれだけ服装で威厳を出そうとも、強い部下がいても、私は臆病です。
………………いつ女だと知られるかわからない。
この国では普通は男性が王位の座を継承するのですが、本来、この席に座っているはずの父、兄は私が幼いころの遠征で何者かの襲撃に会い亡くなっています。
それ以来、私は次期国王として、男として民達の前で振る舞っているのです。
実際に知っているのはマリンとガブリエル、昔からシリウス家に仕えている数人しか知りません。ですが、もしこれが民に知られてしまったら……
おそらく反発を生み、この地は戦乱に巻き込まれるでしょう。
そうならないためにも、着飾り、民に優しく接し、「国王」を演じます。
これまでも、これからも。
「長旅でお疲れでしょう。もう少ししたら歓迎会として宴の催しをさせていただきます。 どうか、固くならずに、ゆっくりとおくつろぎになってください。」
「すみません。有難い事です。」
私は、国王。アルトネリア。
――――――――――――――――――――――
GM:じゃぁそんな感じでアルトが自己紹介を終えると部屋の隅に準備されていた移動テーブルなどが動かされ、料理がもてなされます。宴会と言うか簡単な歓迎会のような感じですね。
ソラーレ:そこまでしてくれるのか、いい国じゃん。
GM:しかし準備をしている途端、謁見の間にペルセウス隊の一人が急いで駆けこんできます。
ガブリエル:「どうしたラフィール! 何があった!」
GM:じゃぁ話を進めていくよー。
――――――――――――――――――――――
わぁ〜。 ご飯なのだー。お腹すいていたのだー。
宮廷の料理は凄くおいしいのだ。ここの国は海の幸も山の幸も取れるから食文化も豊富で、さまざまな種類のご飯が食べる事が出来るし、たまに殿下のお料理とかも入っているのだ。殿下の料理はとってもおいしいのだ。
けど、この部屋の扉がバタンと私のうきうきした感情を押しつぶすように開く。
嫌な予感がするのだ。
「ガ、ガブリエル隊長!」
「どうしたラフィール。何があった!」
「それが……城の中に何者かが入ったようです! 城の中に居た傭兵達、兵士達が応戦しているのですが一人相手に次々と倒されています! 至急、応援を!」
部屋の中の雰囲気がすぐにぴりりとしたものに変わる。
あんまり私は難しい言葉はわからないのだ。でも、どんな事が起こっているのかはだいたいわかるのだ。私の出番なのか?
私は剣。血は流れてないけど、体の中をめぐるものがざわめいている。
「おい! それは本当か!」
先ほどまで呆けていたクリスの目の色が変わり、ラフィールの肩を掴みかかっている
「やめろ、野蛮人。」
「んだと!」
「落ち着きなさい。二人とも、お客人の前ですよ。」
「チッ」
「これは失礼しました……すぐに私も行く。ペルセウス隊もすぐに応戦に当たらせろ。 殿下、私も見に行ってまいります。」
そう言ってガブリエルが部屋をでていく。それにしても聞いている限り侵入者は一人なのにクリスの傭兵、兵士達を倒すなんて凄いのだ。そんなことができるのはガブリエルと私、良くてクリスくらいなのだ。
「殿下、それについてなんですが僕が入ってくるときに少女を見かけました。おそらく手練れのアーティストでしょう。」
「クソが……」
クリスも出て行ったのだ。殿下に何も言わずに行くのはダメってガブリエルが言っていたけどいいのか?
「お騒がせして申し訳ありません。 どうかソラーレ殿はお気になさらず、ゆっくりとしていてください。お茶はいかがですか?」
ともかく私もガブリエルの後を追いかけるのだ。 てけてけ。
――――――――――――――――――――――
クリス:俺の傭兵団が演出でだいぶ削られた模様(笑)
ガブリエル:ぷぎゃーわろすわろす(笑)
ソラーレ:仲いいのか悪いのか。
ガブリエル:ともかく侵入者の所に行くぞ。まぁ姫さんはPC二人もつけてるし大丈夫だろ
クリス:※ただし姫さん含め全員後衛の模様(爆笑)
ガブリエル:やべぇ(爆笑)
セレーネー:で、どう?
GM:えっとね、皆が現場に急行したときにはすぐに逃げられていて、闘っていた人達は全滅しています。
ガブリエル:どういうやられかたしてるん?
GM:んーじゃぁ混沌知識で良いのかな?
ガブリエル:きついなー。
(ころころころ……)
クリス:前衛が持ってるわけないだろ(笑)
GM:でもクリスとガブリエルは成功してるね。剣などというよりかは、何かで貫かれたような感じかな? と言っても槍とかじゃない。 メタだけど、普通の銃ではないね。弾丸残ってないし。矢なら刺さると思うし。
ガブリエル:「すぐにマリン殿に報告しろ。この賊は意外と厄介かもしれない。」
ラフィール:「はっ!」
クリス:「オイ、騎士団長。ソラーレの報告も聞かずに出て行くなんてオツムが弱いのか?」
ガブリエル:「あの状況ではすぐに行動した事がよかったのも貴様はわからんのか?」
(遠くのマリン):あ、絶対あいつ等ケンカしてるな。
クリス:超上から目線で特徴を話すよ。
ガブリエル:「そんな少女がこのような事を出来うはずがないだろう。」まぁ、その少女も探させるんですが。
前衛組:とりあえずしらみつぶしに探すか。
GM:じゃぁ前衛組が城の中を探していると謁見の間。歓迎会の途中ですね。幼女が入ってきます。
マリン:後・衛・組・ピ・ン・チ
GM:当然ソラーレは見覚えがあります。
ソラーレ:だろうなぁー
――――――――――――――――――――――
ふわぁ……ねむいのぅ。
周りはソラーレ殿の歓迎会となっていて、立ち話と食事で賑わっている。にぎやかな事はいいことじゃ。しかし、新しいメイジか。困るのぅ。
ワシはこう見えても大魔法使い。使うのは時空魔法じゃ。そのなかでも、『肉体時間の逆行と低速化』、簡単に言うと『若返りと若さキープ』が専門で、独自魔法も編み出した。そのおかげでダークメイジとしてアカデミーを追われたのじゃが。
しかしまだ魔法は完全じゃないので独自魔法の記憶や様々な事は忘れたり衰えとる。けど覚えている部分や研究で何度も若返り、ややこしい部分はあるが約三百年ちょっと生きているわけじゃな。
現在はアルトの所に匿ってもらっているようなものなのじゃが、やはりメイジにはバレるのはマズイじゃろう。アルトにも迷惑がかかりそうじゃしの。 ソラーレ殿も前任のメイジのように話がわかる方か、気づかれなければよいのだが……
ふと、そんな事を考えておったら気づくのが一歩後れてしもうたな。既に気配が窓の外に在るではないか。そんな所におったら危ないぞ。
ワシはそのまま手を目の前に伸ばし、障壁の魔法を詠唱する。こんな基礎魔法一瞬で唱えるわい。
やはり魔法は綺麗なものだ。手の先から混沌の流れを収束し、光と変換し空中に魔方陣を描く。光で出来た魔方陣から放たれ、少し散って行く光が小さくなって霧散する。
どうやらソラ殿も同じことをやっているようじゃ。アレに気づくとはなかなか良き素質ではないか。 光の障壁は同じ場所に具現化させれば収束した混沌が崩れ、魔法としての意味をなさない。自分の魔方陣に少し手を加え、障壁の補助魔法へと変化させる。
この辺は、やはり年と経験の差じゃな。
突然、謁見の間に光の障壁が姿を現す。それと同時に、可愛らしい服を着た少女が部屋の横の窓ガラスを突き破り着地、何もない空間から銃のようなものを二丁取り出し、アルトに向かって息をつく間もないほど連射する。が、障壁は少し揺らぐものの、放った弾丸は全て吸収され、アルトに当たる事はなかった。
ま、こんなもんじゃの。ソラーレ殿の障壁だけでは防ぎきれんかったじゃろ。 もちろん。ワシだけでもな。ソラ殿がいてくれて助かったわい。
ソラ殿が驚いたようにこちらを見ているが気にしない。口笛でも吹いておくかの。
「貴様、何者だ!」「もしかして報告にあった少女か!」
近くに居たペルセウス隊がすぐに少女を取り囲み、取り押さえようとするが、年齢に見合わず少女は高く跳躍し蹴りを繰り出す。
「私は目的があってきたの。」
ペルセウス隊の一人が吹き飛ばされる。こりゃぁガブリエルとかがいないと無理じゃの。
「だ、団長に報告しろ!」
同じ事を思ったのかペルセウス隊の一人が駆けだしていく。まぁ、時間を稼ぐのは簡単じゃろう。しかし、この少女、魔法銃とでも呼ぼうか。なかなか良き腕……いやどのようなものか気になるの。
しかし、それ以上に気になるのは少女の表情じゃ。全く変化しておらん。無表情じゃな。
少女は衛兵を蹴散らし、魔法銃を撃ち、障壁を崩そうとしている。それも無表情で全てをこなしている。まるで動力機械のように。設定されている動作のように。……興味深い。
いくらか時間が経ったか、ガブリエルとセレーネー、クリスが戻ってきた。後はこいつ等に任せればよかろう。
「はぁっ!」
ガブリエルが上段から剣を振り下ろすが両手の魔法銃で受け止められる。ほぼ同じタイミングでセレーネーが横から片手を剣に変えて刺突をする。以心伝心、素早くかつ攻撃的な連携だったが、片手の魔法銃をガブリエルの剣から伝わる力を用いて弾き、セレーネーの刺突を魔法銃に当ててずらした。
「うらぁぁ!」
しかしクリスがガブリエルごと飛ばす勢いで飛び蹴りを放っており、ガブリエルは後ろの死角のはずだが体を避け、クリスは死角からの一撃に反応できず吹き飛ばされ、障壁に当たって体が崩れ落ちる。 流石の連携じゃ。
「ガブ殿、クリス殿、縛っちゃって?」
とりあえずこれでワシの仕事はおしまいじゃろう。
(味方ごと吹き飛ばすつもりとは。しかも何故死角からの攻撃をあの騎士は絶妙なタイミングで避けられたのです?)
少しでも避けるのが遅かったら一緒に吹き飛ばされ、私と吹っ飛んでいる時に私が騎士を撃てました。また、避けるのが早ければ私は普通に避けてカウンターができたでしょう。
そのくらいの事は彼らにもわかるはず。普通はあんな相手頼りの攻撃はしない。しかも死角からで見えないはずなのに。なぜ、なぜ。こんな事は初めてです。
私は少し考えた後、魔法銃を地面に落とし両手を上げる事にしました。おそらくここで戦っても依頼は果たせないでしょう。
「お早い降参だな。お前は相手が悪かった。それだけだ。アルトネリア公に牙をむけた事、それ自体が、死罪に値する。」
騎士が話しかけてくる。
「ハイハイハイ、ガブ殿、まずはこ奴に話を聞く事の方が先決じゃろ?」
……私はどうしたらよいのだろう。
こいつは……なかなかヤバい国だったんじゃね……?
時既に遅し。こう言う事を言うのだろう。さっきまで平和ボケしているのは街だと思っていたけど僕の方だったのか?
何かとぶっ飛んでる暗殺者、おそらく僕より上位、いや途方もないほどヤバめな魔術師、騎士と傭兵、女の子の動きは早くて僕には見えなかった。そして何より、
この王様、表情一つ変えてねえぞぉー。
「あ、あ、あわわわ」
おそらくパニックになっているのは僕一人。
「マリン。一応魔法の壁は継続で頼む。」
「わかっとるぞ。」
わかりました。障壁を消しかけていましたがもう一度貼り直しておきます。心の中でそう言っておく。
片手を剣に変えた少女が暗殺者の首に刃を押しつけているが、暗殺者の少女に動じる気配、表情もない。やがて、王様が口を開く。
「投降していただけたのは幸いです。無礼を承知でお聞きしますが、貴方はなぜこのような事を? 目的をお話ししていただけませんか?」
「それは言えない。 と言ってもわかってるんでしょ? アルトネリア公の暗殺。」
「それはアルトネリア公を殺そうとした事を認めるんだな!」
「まぁお待ちなさい。誰に言われたのですか?」
「それは言えない。」
「貴様……黙るとロクなことにならんぞ。」
僕一人でもどうにもならないのに、この少女が夜に潜入し暗殺などを企んでいたらどうにもならなかっただろう。しかもこの少女の武器、弾丸が残らない……というより、魔法を撃ちだしているから凶器がわからない上に対処しづらい。
「ちょ―っと質問なんじゃがの。 その武器はどうなっているのじゃ?」
「マリン殿。空気を読んでいただきたい。」
「貴方ならわかっているんでしょ?」
そう言って少女は先ほどクリスと言っていた傭兵の方を向く。
「アーティストにそう言った類のものがあると聞いている。」
「アーティストか……その服で隠していたのか。」
クリスさんは壁にもたれかかり、いらいらとしている。おそらく自分の傭兵がやられたのだろう。それはガブリエルさんも同じで、いらだちを隠しきれていない。
「アルトネリア公。どのようにいたしましょう?」
「あまり乱暴をするのはいただけませんが……」
「しかし貴方はお命を狙われていたのですよ!」
「大丈夫よ。 私はもう狙わないわ。 だって一度失敗したもの。これ以上どうにもならないわ。」
「つまり、情報を吐くと?」
「依頼者以外の事ならね。」
「くっ……アルトネリア公、どのようにいたしましょう。」
「彼女がこれ以上害を加えるつもりはないと言うのであれば牢に閉じ込めたり、命を奪うなどの事はしないでほしいのです。」
「何を仰っているんですか殿下!」
「気持ち悪いが俺も同感だ。 部下達が死んだ。」
「しかし、彼女は年端もいかない少女。酷だと思います。一度ここは様子を見ると言う事で、直属のものをつかせると言うのはどうでしょう?」
僕は正直、参謀になる身としては難しい判断だと思っている。クリスさんやガブリエルさん達の言うとおり、兵の命やアルトネリア公の命が危険、かつ生かしておけば傭兵団などにも恨みを買ってしまう。が、この少女は手懐ける事が出来れば莫大な戦力となる。
おそらくこの国最強、もしくはそれに準ずるだろう。必要になったり使える場面が来るはずだ。……悩ましい。
「つまり誰かが監視役をするということかの? ならセレーネー殿と言う適役がいるではないか。 年も近いし、簡単な勉強ならワシが教えようではないか。」
「わたしならかまわないのだー。」
「しかし……わかった。セレーネー、任せたぞ。 しかし、今まで何度も依頼をこなしてきた可能性がある。危険だと言う事は胸に刻んでおけ。」
「俺も乗り気じゃないが……そう言う事なら、こちらから依頼をすればいい。」
「フン。まるで考え方が汚い傭兵のようだな。」
「悪いね。こちとら本職なもんで。考え方が綺麗すぎる騎士さまなこった。……とりあえず殿下、忠告はしておくぞ。傭兵なら裏切る。」
「わかりました。」
クリスさんが足音荒く謁見の間から出ていく。おそらく、彼はこれから傭兵達の知り合い、家族のもとへと向かうのだろう。辛い役を引き受けさせてしまった。これは僕が王の意見を否定しなかったからでもある。その結果、空気に流されてしまった……。悔しさと同情から口元を引き締める。
でもまず、僕はこの場を参謀として見届けないと。
「私にできる依頼なら何でも受けましょう。見返りは居場所。それだけでいいわ。」
「ではどうかな。私の部下となれ。」
妥当なものだ。悪くない。
「いいわよ。交渉成立ね。」
「ではセレーネー。この子を貴方に任せる。基本的な事とかは教えてあげてください。」
「わかったのだー。」
「では私はこれにて。」
ガブリエルさんも下がって行く。彼も何かつぶやいているのに気づいた。彼にも重荷を背負わせてしまった。
――――――――――――――――――――――
マリン:ま、魔法銃!? そ、それはどんなしくみなのかの!?
GM:魔法関係のマリンの食いつきよ(笑)
クリス:アーティスト関連だって。
マリン:なんだー。ならいいや
クリス:この落差(笑)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アルト:「お前に世界の半分をやろう。」
クリス:なに言ってんだこいつ(笑)
セレーネー:というかやけに簡単に交渉成立しちゃったね。大丈夫?
ガブリエル:うーん、難しいけどガブリエルは姫の決定に従うしなー。不満ぽいけど。
GM:まぁこの子一人で死んだ奴らの何十倍も仕事はするね。
ガブリエル:「そのような命の足し引きは私は嫌いだ。私は失礼します。……姫は優しすぎる。」
アルト:そういや名前聞いてなくね?
GM:あ、ミストレアって言ってくれますよ。皆何かする? 今城内では不穏な噂とかが絶えませんが
ガブリエル:迷いを断ち切るために素振りしておく。あと、騎士団にも不穏なうわさはやめるように伝えておくし、影打ちなど馬鹿な真似はしないように言っておくか。
ガブリエル:ガブ自身不安だしなー。王政が傾きかけたらクーデター起こすかな(笑)
クリス:お、面白そう。 乗った乗った(笑)
マリン:まぁガブちゃんが今一番つらいだろうからのー。 そっとしてやれって一応ツテにも言っておくか。
セレーネー:じゃぁミストレアに城中を案内して回ります。 できるだけ人に会わないように。
セレーネー:色々聞いてみるけど?
GM:依頼主の事は何も言ってくれないけどそれ以外のこと話すよ。
セレーネー:だよねー
――――――――――――――――――――――
「ここが食堂なのだー。この国はいっぱいおいしいものが多いのだー。」
結局ガブリエルに頼まれて部屋を紹介してるけど、ミストレアちゃんは無反応でつまらないのだー。殿下の方がまだいじりがいがあるのだー。
私はこの子をどうするのかなんて興味ないし、ガブリエルの言った事に従うだけなのだ。難しい事はぜんぶガブリエルにパスなのだー! ……でも、この子は結構かわいそうな目をしているのだ。私だって感情があるし嫌な事は嫌って言うのだ。でも、この子にはそれがない。ど―言ったらいいのだー!
「貴方は私と似ているのね。ただ、依頼された事をこなす道具として。」
急に話しかけられた。びっくりしたのだ。
「似てるって言われてもなー。わからないのだー。あと依頼ってなんのことなのだ?」
い、依頼……? おねがいと同じ意味だっけ?
「わたしは恩を返しているだけなのだー。 あと、私は道具だけど道具じゃないのだー。
んー。とにかく難しいのだー!」
うきゃー! 難しいのだー! ガブリエル助けてー!
「ふぅん……恩、ね。」
「ぶっちゃけその辺もどうでもいいことなのだ。」
きっぱり言ってやったのだ。ドヤ。
「そーいやいつアーティストになったのだ? 私は生まれつきだけど……」
「物心あった時にはすでになってたわ。 暗い闇の世界で暗殺者として育てられた。」
「ふーん。」
話を振ってみたけど正直どーでもいいのだ。でも私の方がお姉さんっぽいのだ。いぇい。
そう言っているうちに全部紹介し終わったのだ。とりあえず……
「ガブリエルー。紹介終わったのだ―。」
全部投げることにした。丁度ガブリエルも特訓終わったみたいなのだ。汗ふいてる。
「あぁ……セレーネーか。ちゃんと案内したんだろうな?」
「たぶんー。」
「ある程度聞きました。 城の構造上一部紹介してもらってない場所もありますが暮らすのには支障ありません……」
それからずっと私が言った言葉を並べてるのだ。よく覚えてられるのだ。でも動力機械みたいでちょっと怖いのだ。感情とかないのか? ……あ、私ちょっとだけ部屋の説明間違えてるけどまぁいいのだ。
「わかった。 その辺でいい。……正直、私はお前を許していない。私の主を殺そうとしたんだからな。しかし、寛大にもアルトネリア公はお前を許された。つまり、敵ではなくなった。 そして、お前はまだ年端もいかない少女。年功序列でいけば私はお前を見る義務がある……そう、あるんだ。」
「何のことでしょうか?」
「まぁいい。とりあえずお前に二、三質問がある。答えてくれ。」
難しいのだ。寝ておくことにするのだ。
――――――――――――――――――――――
GM:さて、質問かな。
アルト:じゃぁお風呂はいっておくか(笑)
ガブリエル:こんなときにラッキースケベ86TRUENOがいないぞ(笑)
マリン:ラッキースケベ(笑) いや、此処はワシが。
ソラーレ:お供しますぜ(笑)
アルトネリア:普通に鍵かけてるだろ(笑)ガチャガチャ
ガブリエル:お前らバカか(笑)
GM:やけにカオスだな(笑)さて、普通に質問に戻るか。
ガブリエル:あぁ。「どこから来たんだ?」
ミストレア:「依頼主とかかわるから言えない。」
ガブリエル:「どのような団体、軍、もしくは組織に所属していたかわかるか?」
ミストレア:「私は元の依頼主しか依頼を受けた事はなかったわ。」
ガブリエル:「つまりお前は生まれてからずっとそいつからの依頼しか受けたことがないと。」
ミストレア:「そう。 その人に会うまでは私は一人だったわ。」
ガブリエル:「そんな相手を簡単に裏切るのはどうなんだ?」
ミストレア:「べつに? 新しく依頼を受けただけ。」
ガブリエル:「フン……」他なんか聞きたいことある?
マリン:侵入経路は?
ミストレア:「メイジが門から入った時に気配を消して紛れて入ったわ。」
ガブリエル:門番更迭待ったなし。
ミストレア:「別に負けるなんて思ってなかったし城内地図もなかったからテキトーに探しました。 そうしたら四階から三階で賑やかな声がして、王がいるのも見えたので、そのまま飛び込みました。」
GM:ぶっちゃけ城の中の構造わからなかったからしらみつぶしに。目に着いて止めてきた傭兵を殺した。って感じです。
アルト:年齢は?
ミストレア:「十二です。」
クリス:合法だな。セーフ。(ドヤ
ガブリエル:違法なんだよなぁ……
GM:普通にアウトなんだけどなぁー
ガブリエル:これ以上はないかー?……「この国には教育というものがあってだな。お前もそれを受けてもらう。座学とかは受けてこなかったのか?」
ミストレア:「受けてない。私には必要ないもの。」
ガブリエル:「……お前はまだ幼い。 それ故、暗殺者として使うつもりはない。」
ミストレア:「でも、私はこれまで色んな……」
ガブリエル:「出来る出来ないの話ではない。 年端もいかない少女を使う気はない。大人になってから使える事が出来るように俺の信頼をかち取るんだな。」
GM:それではミストレアは「でもここの配置や傭兵達は弱かった。……」と言って、配置などの戦術指南をしだします。まごう事なきプロですね。
ガブリエル:「わかった……見くびっていたことは謝るが子供に違いはない。俺の事はよく聞くことだな。」
ミストレア:「わかった。」
ガブリエル:じゃぁ頭をポンポンと叩いて「セレーネー、起きろ。」
セレーネー:「はぁーい」
ガブリエル:「マリン殿の所に連れて行って読み書きを教えてやってくれ。」
セレーネー:「わかったのだー。」
セレーネー:袖を掴んで引っ張って行くー。
――――――――――――――――――――――
「今日はこんなもんじゃな。」
夕暮れのとある一室。窓から少し暖かいようなオレンジ色の光が差し込む。長い時間を生きている中でも、この時間は凄くゆったりとしている。ワシの好きなひと時じゃ。そこでワシはミストレアに読み書きを教えていた。
「……驚くほど成長が凄いな。成長と言うか、暗記か?」
壁にもたれかかったクリスが驚くのも無理はない。ミストレアはワシに教えてもらうまでもなく、見たものを記憶する時間が一般人の何倍も速い。
……ただし、発想、アレンジに関しては一般人に程遠いほど劣っている。これまでの人生であまり物事を考えなかったのか、今までの物事からパターンを予測する。と言ったようなワシの苦手な最近はやりの「動力機械」に似ている。
「くぅぅうう……」
そこで立ったまま寝ているセレーネーとは真逆のタイプじゃな。
「これは何のためになるの?」
ミストレアが問いかけてくる。覗きこむ彼女のまだ幼い瞳は純粋で、脆そうに見えた。
「読み書きは無くて困ることはないぞ。」
「私は今まで必要無かったわ。」
彼女はまだ感情を知らないのだろう。長い時を生きているワシだからこそ生まれて間もない彼女に教えてやらねばならん。
「今までは……じゃろ?」
沈黙が続く。彼女はおそらく過酷な環境で生きてきたに違いは無いだろう。だが、生き方は変えられるし、生きさせてもらっているだけラッキーなのじゃ。どうとでもなるものよ。……親子揃って、優しすぎるのぅ。
「マリン、終わったならソイツ借りていいか?」
「構わんよ。」
「ついて来い。」
クリスがミストレアを引き連れて外に出ていく。奴も無茶をするものじゃ。ワシも席を立ちセレーネーを起こした後ガブリエルにクリスがミストレアを連れていったことを伝えるのじゃと言い、部屋を出す。
そして窓から外を眺める。夕日が綺麗で心が安らぐようだ。
……このままだと厳しい運命を、いや、彼女が変わればあるいは。
日が沈んだ。街は若干明るい中ランプやカンテラ、魔法照明が街を照らしだす。
「くっ……」
日が落ち、暗闇の騎士団訓練場。そこは様々な地形に対応するために、という理由でガブリエルが作った特殊訓練施設がある。その中の一つ、森林エリアで俺達は模擬戦をしていた。闘って確信した。ミストレアは感情、自分の意思がない。
正確に、確実に、敵の動きのパターンから来る予測。
目の前に飛んできた弾丸を避ける。おそらく避けるのは想定済みなのだろう。本命の弾丸、模擬戦だから弱体化させているのか、鈍い痛みが足に響く。
「お前は感情がないのか?」
「そんなもの必要ありません。感情は邪魔をするだけ。」
先ほどの足狙いは完全に効いている。俺の得意としている素早さが完全に潰されてしまった。流石に無茶だったか。コイツに勝てるのはクソ騎士団長とセレーネーくらいか。それがわかっただけでも十分だ。もう既に弾丸を何発も喰らっている。せめて一撃……
「お前は動力機械でしかない。しかし、原動力、そして力となるのは憎しみなどの感情だ。貴様ではまだクソ野郎を倒す事は出来んだろう。何度でも立ち上がってくるからな。貴様にはそれが理解できんはずだ。」
「察するにクソ野郎とはガブリエル騎士団長だと推測します。」
身をひそめていた木の陰から飛び出す。覚悟の上だ。弾丸を喰らって負けようと一撃だけは当ててやる。持っている日本刀に力を込め、出せるだけの全力を出して突進した。
「貴方の人柄から無茶をすると踏んでいました。」
ミストレアは予測していたのだろう、跳躍し後ろに着地、かちゃりと音がする。こちらに銃を向けたのだろう。一発さえ当たらなかったか。
「……俺の負けだ。」
<肉体調律>で出していた日本刀をしまう。クソ野郎ならどう倒しただろうか。
「やはり感情なんて要らないわ。」
「これは何の騒ぎだ!」
クソ野郎が来やがった。
「マリン殿に聞いてきてみれば……ミストレア、奴の挑発に乗るな。確かに、お前には感情がないのかもしれない。だが、それはお前がそう育ってきたからだ。さらに、お前は感情が要らないと言うがそれはまだお前が感情を持ってないからだ。そしてもう一つ、子供はもう寝る時間だ。セレーネーの部屋へ行け。」
ミストレアはそれを聞いて去って行った。暗殺者は心が要らないと言うが俺はそう思わない。憎しみ、恐怖感などから得られるものもあると考えている。だが、俺もここまでやられて黙っているほど人が出来ちゃいない。クソ野郎の方に向く。
「おい、ガブリエル。貴様に貸しを作るとはな。 ……訓練に付き合ってくれ。」
「フン、見事にやられたな。私は貸しなどと考えていない。お前の事はある程度認めているつもりだ。あと全力で行かせてもらうぞ。」
月の光が森林にさし、剣戟が森林に響く。
――――――――――――――――――――――
クリス:やべぇめっちゃ強いよこいつ(笑)
アルト:舐めプされてたな(笑)
セレーネー:かっこ悪(笑)
クリス:一発くらいは当てられると思ったが甘かったか(笑)すまぬー。
GM:じゃぁセレーネーの部屋だね。
セレーネー:ハンモックで寝てるよー。
ガブリエル:ハンモック二つくらいあるだろ(笑)頼んだ(笑)
GM:いや、ミストレアはハンモックを使わずに壁にもたれかかって寝るよ。
セレーネー:ハンモックに引っ張り上げるよー。
ミストレア:「何をする気?」
セレーネー:「? 一緒に寝るだけなのだー。」
ミストレア:「お断りさせてもらうわ。暗殺者はいつどこで首を狙われるかわからないもの。」
GM:どうやら寝ていないようで、休眠というより仮眠してるだけみたいだね。
マリン:キリンとかシマウマみたいな?(笑)
ガブリエル:なんだそれ(笑)脳みそ半分だけ寝かせてるのか(笑)
セレーネー:「子供はぐっすり寝るものなのだとガブリエルが言ってたのだー。」
セレーネー:……って言っても無理そうだし布団出してかぶせとくか。
GM:はい了解。そんな感じで夜は更けて……
ガブリエル:あ、じゃぁちょっとアルトネリアとのシーン作りたいな。
アルトネリア:お?出番かな?
GM:いいよ。
――――――――――――――――――――――
私の寝室を月影が部屋の中を青く照らす。私は寝静まった街を一人眺めていた。兄様、私はこれからどのようにしたらよいのでしょう。私の周りには優秀な部下が沢山います。が、私がこれじゃ、皆の足を引きずるばかりで……街の人も私と仲良くしてくれていますが、私が男と偽って王座に就いている事を知ったらやはり反感を買うでしょう。
……ふと、部屋のノックが鳴る。こんな時間に誰だろう。
「失礼します。」
「ガブリエルですか……どうしました?こんな時間に。」
「今私は、ガブリエル・エ・グリンホルンという騎士ではなく、貴方の兄代わりのガブリエルとして話します。……貴方は少し、不用心が過ぎます。貴方のその優しさは下手をすれば甘さとも取られる。気をつけてください。私は貴方の命が危ないと心配しているのです。」
「私の事は別にどうでもいいのです。ただ、ミストレアの事を言っているのであれば民や他の人に迷惑をかける事が心配なのです。」
「しかし……民あっての王ではありますが、民は王がいなければ纏まりません。貴方の存在こそが、民を導くシンボルとして大事な意味があるのです。そのようにご自身を投げ捨てるような発言はなさらないでください。それでは騎士としての私の甲斐性が無くなってしまいますから。」
「王あっての民ですか……今の私は本当に王として出来ているのでしょうか。」
「貴方はまだ若いのです。これからでも、貴方が目指す王になることはできる。貴方から女性としての人生を奪ってしまったことはとても心苦しい。しかし、これも貴方の言う『国の為』なのです。これ以上は、私は貴方に傷ついて欲しくない。……貴方も少しわがままを言ってみてはどうでしょう。私も兄代わりとして安心できます。」
「ありがとう。ガブリエル。」
「では、騎士としてのガブリエルに戻ります。お休みなさいませ、殿下。」
本当に、ガブリエルは良くできている。……故に、私はどうかと考えると胸が痛む。この痛みは私が変わらない限り続くのでしょう。
窓を少し開けてみた。まだ春先の少し寒い風の中、身に当たる月の光だけが心地よかった。
――――――――――――――――――――――
GM:では、プレッジシーンです。最初の二人が話しているシーンですね。ここでプレイヤーは一人として登場することができません。
ガブリエル:マジか(笑)最初の二人のうち一人はマリンだと思ってた(笑)
クリス:俺ラスボスがマリンだと思ってた(笑)
マリン:ちがうぞい!わしはちがうぞい!
ソラーレ:ひっでぇ(笑)
GM:(笑)いいかな?
ヴェルテュレーヴェでアルトネリアが寝静まる同刻、
クリス&ガブリエル:「( ?ω?)スヤァ」
ソラーレ:はもるな(爆笑)
――――――――――――――――――――――
ヴェルテュレーヴェでアルトネリアが寝静まる同刻、辺境地帯、二人のローブをかぶった人物が会っていた。
「……ミストレアはどうした?」
「さぁな。奴のことだ。失敗したんだろう。」
「失敗した? とっておきじゃなかったのか?」
「とっておきさ、とっておきだからこそ失敗したのさ。……ここからが面白い。」
「お前の言う事は信用ならん。失敗は失敗だ。他に手は無いのか?」
「あいつはあいつで好きなようにやる。あいつの考えている事は私にもわからない。」
「もういい。私自ら行く。」
――――――――――――――――――――――
お菓子タイム&因縁の取りあい
ソラーレ:マリンに『大先輩』とるー。
クリス:ミストレアに『心・感情があれば強くなれる』
セレーネー:ミストレアに『不明』
アルトネリア:『可能性』をマリンに。『愛情』をミストレアに。
マリン:ガブリエルに『感服』
ガブリエル:アルトネリアに『可能性』
(チョコ菓子が驚くスピードで無くなって行く)
ガブリエル:というかアルトネリアがいい王になってほしいと思ってるの俺だけか?(笑)
――――――――――――――――――――――
夜が更け朝が来る。一度寝て、また早朝からクリスの訓練に付き合っていたところだった。セレーネーが駆けてくる。
「ガブリエルー。ミストレアが居ないのだー。私の知らないうちにどっか行っちゃったのか?」
「それは本当か? おいクリス。訓練はいったん中止だ。ミストレアを探すぞ。セレーネーはペルセウス隊を捜索に当たらせろ。」
俺は汗をぬぐい、先ほど俺の一撃を受けて地面に倒れていたクリスを立たせる。奴も粘るが、真っ向勝負では私にはまだ遠く及ばないようだ。
「はぁ……はぁ……」
意識が若干混濁しているようだが気を使うだけ無駄だろう。俺は自分の準備だけして先にアルトネリアのもとに向かう準備をする。
「隊長! 緊急です! 襲撃者が入りました。しかしミストレアが迎撃しています!」
「何!? セレーネー、急ぐんだ!」
「らじゃぁー!」
セレーネーも普段では考えられないような速度で城の方へ駆けていく。俺も急がなければ。
「はぁあっ!」
持っていたエストックで賊を刺し、薙ぎ払い、攻撃を受け流す。ミストレアも頑張っているようだが相手はまあまあ腕の立つアーティスト集団、すぐに一掃できるわけではないようだ。
「うらぁっ!」
クリスも迎撃しているが先ほどの訓練で疲れているのだろう。動きが鈍い。
「たぁああ!」
私が来た時には賊の数は三十ちょっとと言ったところだった。いくらか賊と戦っているうちにセレーネーがこちらに敵の攻撃を後ろ手によけながら駆けてくる。そして近くに来たかと思うと彼女の体が光に包まれ剣へと姿を変える。
薄い光が剣を包み、次第に晴れていく。光の下から現れた銀色の刃が煌めき敵を捕らえた。彼女を掴んで振り向きざまに背後を取ろうとしていたアーティストに一撃を浴びせる。
その斬撃の軌跡は陽炎のように揺らぐように敵は感じる。が、その幻の軌跡が嘘のような速さで刃が敵を斬る。斬られた敵はその剣の重量によって吹き飛び、意識が消えようとしている中、陽炎の中に見える太陽の光に照らされた騎士を見る。
『太陽の騎士』
ガブリエルはそう呼ばれていた。
「団長、遅れました。」
ラフィール含め騎士団のものが大勢駆け付けてくる。どうやらこれで片は付きそうだ。
「ガブリエル、だいじょうぶですか?」
「殿下! なぜこのような所に!」
それに続きマリンとソラーレ殿も攻撃呪文を唱えながら城から出てきた。
しかし周りでは色々な話声が聞こえる。敵が何故襲撃してきたのかもわからないし、なによりミストレアの存在が街の人にばれてしまったのと、騎士達の中でなぜ昨日の賊が(おそらく仲間であろう)敵に攻撃をしているのか。とりあえず、ここは場を納めなければ。
そう思った時だった。
「静まれ。ただの賊を撃ち滅ぼしただけのこと。その少女は不幸な訳があってアルトネリアさまのご厚意でこちらで引き取っている。民の皆にも世話をかけることになるかもしれない。その時は宜しくしてやってくれ。」
「ガブリエル、ここは私が。……彼女は今まで戦いしか学んできませんでした。私は彼女に人並みの幸せを与えてあげたいのです。私は民にも、あの子にも幸せになってもらいたいのです。どうか、皆の力を貸していただけませんでしょうか。」
「おぉ……アルトネリア様……」
この様子を見てつくづく殿下は民に愛されていると感じる。だが、もし殿下が女性だとばれてしまってはどうなるだろうか……。とにかく、敵の攻撃の件もある。兵の出所を調べ、迅速に処理せねば。
俺は騎士団に敵兵を捕縛させ、連行するよう指示を出す。
そんな時だった。角笛が鳴り響き、街の方から多くの足音が聞こえてくる。どうやら軍隊のようだ。しかし民は逃げるような事はせず、むしろ迎え入れている。一体どういうことか。
そして、一人の男がこちらに向かってくる。
「ヴァレリー様!」
俺はその男に見覚えがあった。アルトネリア様の兄で、過去に先王と遠征に出かけ、何者かの襲撃に会い、先王と共に戦死したはずだった。
「兄様!」
アルトネリア様は兄上が生きておられた事に驚かれ、その場に崩れ落ち、泣きはじめた。
私としてもヴァレリー様が生きてくださったのは嬉しいが……
何かがおかしい。頭の中を不安がよぎる。
しかしヴァレリー様は動揺した様子も見せず、ずかずかとこちらに寄ってくる。
何かが不味い。この場をおさめなければ。
「民の者よ、ヴァレリー様が帰還なされて喜ぶのもわかるが、ヴァレリー様は長旅でお疲れであることを忘れるな。また明日の朝に正式な発表をするからそれまで待て。」
しかしヴァレリー様は気にすることもなくこちらへ寄ってくる。
「アルトネリアよ。成長したな。」
「兄様、ここでの話はあれですから、中にお入りください。」
「長い間留守にして悪かったな。」
確信した。ヴァレリーは何か企んでいる。
「ヴァレリー様、しかし今まで一体どこに……」
「遠征で深手の傷を負って治療に専念していた。しかし、今はそれより言いたいことがある。」
「……我が妹、アルトネリアよ。早く王城を開け渡すがよい。」
やってくれたなヴァレリー!
アルトネリア様は一瞬にして血の気が引き、地面に崩れ落ちる。私はとっさにアルトネリア様とヴァレリーの間に割って入り、庇う。
理由はまだ分からない。しかし奴はおそらく先の遠征にかこつけて先王を殺した揚句、アルトネリア様まで敵に回し国ごと乗っ取るつもりなのだろう。
「私は先の遠征で深い傷を負い、治療に専念していた。しかし我が妹が男になりすましてまで王座に座っていたようだな。私は王の座を穢したことを許せぬ。今立ち退けば命までは奪わぬからさっさと城を開け渡せ。我が妹よ。」
「まさか……アルトネリア様が女だったなんて……」
「ど、どういうことだ……?」
街の人間もみな困惑し始めた。遅かったか。もう収拾がつかんぞ。
……しかし、おそらく先王を殺したような奴に城を開け渡すわけにもいかない。
「どういうことだ説明しろ!」
「皆、静まれ!」
「私は……私は……」
アルトネリア様も困惑しておられる。……ふと、気がつくとアルトネリア様の肩に手が置かれた。マリンだ。奴もグルなのか?
「アル殿、魔法はエゴぞ。己がしたいようにするがよい。」
「そう……ですね。今の私に出来る事……皆、わがまま言ってごめん。でもこれが正しい判断だと思うの。許して。」
アルトネリア様がひとりでにそう呟くと顔を上げた。涙でぬれた顔を袖で拭き、表情に力が戻る。
「兄様。」
声を張り上げる。完全に男性の声真似はやめたようだ。凛々しい女性の声が民衆と兵士達を黙らせる。
「開け渡す覚悟ができたか妹よ。」
「今まで私が性別を偽ってきたことは事実です。それは民の為だと思い、やったことです。しかし、貴方が先王を嵌め、殺した可能性がある以上、ここはお通しするわけにはまいりません!」
「私は、貴方のその行動を、宣戦布告と受けとり、貴方と戦います!」
「なっ……!!」
その場に居た全員が息をのむ。なんと言う豪胆さだ。無茶が過ぎる。宣戦布告だと?
おそらくここに居る街人たちもヴァレリー公を慕っている者もいるだろうし、裏切りが大いにあり得る。しかも街人の前で戦うと断言した。街人は戦いなんて嫌なはずだ。安全そうな方、こちらより軍勢の多そうなヴァレリー公の元につくに違いない。今ここでそんな事を言うのは自分達の不利でしかないこともわかっているはず。だが……
俺はそういうわがまま嫌いじゃないのでな。
流石アルトネリア様だ。いいか悪いかより、私の好きな判断です。
「私は今ここで宣言します。貴方を討つと。」
「交渉決裂だな。 三日後、三日後だ。ここに必ずお前を討ちに来る。逆賊、アルトネリアよ。民は戦火に巻き込まれないよう逃げる準備をしておくのだ。」
そう言い残すとそのまま軍勢を引きかえし街の外へと去って行った。ここからは俺の仕事だ。立ち台にのぼり、声を張る。
「確かにアルトネリア様は性別を偽っていた。しかし、王とはただ性別で決まるものだろうか。それとも、その人の魅力、実力で、その毅然とした態度で立ち向かうあの姿が王ではないのか。」
「傭兵団『鉄』もアルトネリア側に付く。依頼分の仕事はさせてもらうぜ。」
下でクリスも言っている。良かった。奴ならばヴァレリー側に着くと思っていた。勢力は完全に向こうが上だと考えていた。が、鉄も分裂があるにしろ、団長がこちらに着く分まだ戦える。理由はどうせ傭兵の考えだ。俺には分からないだろう。
「兵士の諸君たちにも通達する、一刻後、城にて招集せよ。参加したくないものはそのまま去って構わん。……剣は使い手を選べぬ、しかし、アルトネリア様は剣を持つ資格を十分にあると考えている。それは諸君たちも良く分かっているはずだ。参加することを切に祈っている。」
後は城で待つのみだ。
「皆……ごめんね……」
やはり私は取りつくろうことしかできない弱虫だ。さっきの話し合いの後、すぐに城に帰って泣きじゃくっていた。街人だけではない。兵士も危険な目にあわせてしまうことになる。しかし、私の判断は間違ってなかったと思いたい。
おそらく、兄は父上を殺したのでしょう。遠征も兄の提案からだったと聞いています。そんな兄に王の座を譲ることはできません。
背中を押してくれたマリンと話しの後を継いでくれたガブリエルにお礼を言わなければ。
そう思い自分の部屋の扉を開け通路に出た時だった。ミストレアが返り血まみれでこちらを向いて立っている。どうやら私を待っていたようだった。
「どうしたの?」
私は涙を拭いて無理をして笑ってみる。どうせぐしゃぐしゃの顔だろう。
「分からないわ。何故城を開け渡さなかったの? 生きたかったなら城を開け渡すのが確実だっただろうに。」
「私としても、意地があります。民を愛して、導かなければならない。兄は昔から国を広げようとするばかり、様々な手や、戦争ばかりを気にしておりました。そのような国に私はしたくないのです。」
「戦いたくないと言って戦うの? 矛盾しているわ。」
そう言って彼女は去ってしまった。わかっています。矛盾しているくらい。だけど、民を、国を守らなきゃ。
どう考えてもあの姫は矛盾している。こんなこと知りません。
私はそのまま通路を進み、階段を下りていきます。途中でガブリエルを見つけました。
「お前にはまだ分からないだろう。ご自身の命よりも、民を選ばれた。それだけ命をかける意味というものがあるのだ。」
「私には何一つとし……
「確かに、理解は出来ていないだろう。ゆっくり学んでいけばいいさ。」
「そう。」
私はいったん止めていた部屋に戻る足を進めることにします。
私はどうすればいいのでしょう。
危険だと言う感情が一回りして面白いと思えてきてしまった。これからこの国を左右する戦いが起こる。僕はきっちりつく側を見定めないと。
一旦僕は城の反対側、街に繰り出した。街の人は残るものもいれば、出ていく準備をする者、それを止めるものなど様々だ。いまやこの国でゆっくり動いているものは煙突から出る煙だけだろう。喧騒と物音、街ではこれでもないほどかと言うほどざわめいていた。
僕は魔術師、それを忘れてはいない。メイジアカデミーから派遣されたと言う事は、その国をサポートする義務がある。また、メイジアカデミーのバックがついていると言うことだ。この場合、中立に立ってみないといけないんだけれど……明らかに一方が正義である場合、そちらについてもいい決まりになっている。
正義って何だよと座学では思っていたが、決まりは決まりだ。有効に使わせてもらおう。
どうみてもヴァレリー公の方の方が優勢だ。裏切りは簡単に起こせるし、(というかもう起こっているし、)元々の軍勢の量では向こうの方が上だ。
だが、そっちにつく気は無い。この国に来て、アルトネリアに会って、どちらか一方を生き残すならアルトネリア公の方がいい。彼女こそ、この国の英雄だろう。ただ、アルトネリアの軍勢は少ない。勝ち残るために僕も戦うつもりだ。
で、そう決めているのに何で街の方に来ているのかというと……
「マリンさん、何故ここに?」
「おっと失礼、研究の為の材料を回に来ておったのじゃ。」
マリンは持っていた羊皮紙や良くわからない石、本を抱きかかえていた。おそらく逃げ去る街人から邪魔になるだけの商品を安く買いたたこうと言う魂胆に違いない。
もうひとつアルトネリア側に残った理由がこの人だ。
メイジは基本メイジアカデミーに登録し活動するのだが、たまに流れ者とかマリンのような感じで元々使えてるパターンもある。が、この人は何か引っかかる……
「ソラ殿も持つの手伝ってくれんかの? 爺に酷な仕打ちだと思わんか?」
「お断りしますよ。まだ三十にしか見えませんからね。」
笑顔で言い放つ。
「それより引き継ぎ業務を昨日やっていたのですがメイジアカデミーの方にも男と偽っていたのですね。」
「まぁそうじゃな。仕方なかろ。」
「貴方が手引きすれば隠ぺいに協力してくれたと思うんですが」
「ん? 年でな。耳が遠くなるんじゃ。何かの?」
「いえ、いいです。」
「ともかくじゃ、彼女の王としての資質はおそらくホンモノ、メイジアカデミーの行動指針に従うかとかこちらにつくのかは知らんが、敵になった場合は容赦はせんぞ。」
「ははは。」
「ソラ殿。魔法はエゴぞ。己がしたいようにするがよい。」
「僕はアルトネリア公の元に使わされました。最後まで彼女の元で働くつもりですから。大丈夫ですよ。」
「それでは安心じゃな! 未来の軍師殿にこれをプレゼントじゃ。後で返してもらうけどな。」
「ただ荷物運びさせているだけじゃないですか……。」
街の城に向かう上り坂を不格好な二人が並んで歩いていた。
「団長、どうします?」
「カネは出るみたいですけれどよかったんですか? 負け戦の匂いがしますぜ。団を抜けるって奴も少ないですがいますし。」
「やばくなったら裏切ってヴァレリーにカネ貰ったらいいだけだろ?」
街中にある大きめの屋敷の一部屋。年季の入った木質の壁はいい味を出していた。それだけ昔から大事にされ続けていたということだ。『鉄』の屋敷、いままでは「なんでも屋」として各地の混沌を静めたり秘境にある素材を集めたりしていた冒険者の屋敷としてのにぎやかな空気は消え去り、「戦争屋」として張りつめた空気を醸し出していた。
「いや、シリウス家には故意にしてもらっている上。アルトネリアにつく方がカネはもらえる額が大きいだろう。ただ団を抜ける奴には忠告をしておけ。もしヴァレリーに雇ってもらうつもりなら容赦はせんと。」
「あいよ。団長。」
「あと正直に言うと軍配が上がるのはアルトネリア側だと思っている。」
「え、団長流石に冗談は。あと団長とアルトネリアの評判もあんまりよくないっすよ。例の件で。」
「城の襲撃で命を落とした仲間の事だろう? だがアルトネリアの判断も分かる。軍配 の件も同じだ。襲撃者は味方についた。」
「しかし団長普通そんな奴信用できませんよ。」
「もっともだ。……だが俺はそれ以上に城の奴らを信用できる。奴らなら襲撃者をうまく取り込めるだろう。」
「はぁ……まぁ分かりました。」
「団長、お手紙です。」
一番若いガキの団員が手紙を渡してくれる。俺も昔はこのクロガネに拾われて入団した時のことを思い出す。本当に前団長は良くしてくれた。恩義を返す前にくたばったのが俺の唯一の心残りだ。そう考えながら手紙の印を外し、文章に目を通す。
私はミストレアを追ったのだ。今頃ガブリエルは忙しいのだ。私は暇だからどーせ暇なミストレアをいじくって遊ぶことにするのだ。
少し歩いているとミストレアが城の屋上で街を見ていたのをみつけたのだ。
「今何を考えているのだー?」
「私も分からないわ。」
「うーん? 分からないって言われてもなー?」
まだ少し肌寒い風に吹かれミストレアの髪がなびく。私は薄着だからすごく寒いのだ。
「よろしいですか?」
アルトネリアも来たようなのだ。
「ここの景色、綺麗だよね。私はこの景色を守りたいの。だから戦う。だから一緒に戦ってくれないかな?」
ミストレアはだんまりなのだ。ずっと街を見てる。人と話す時はちゃんと目を見て離さないといけないのだ。でもそれを言うとなんかまずそうだから言わないでおく。
「じゃぁ。セレーネーちゃんも。……大丈夫だと思うけど風邪ひかないようにね。」
にこっと微笑んで帰って行ったのだ。やっぱりアルトネリアは女の子の時の方がいいのだ。そう思いながら、私も一旦帰るのだ。ミストレアに温かい飲み物用意してやるのだ。
お姉さんだからな。
あはははははははははははははははははははははははははははははははっはははははっはははははははははははははははははははははっはははははははははははははは。
やっと見つけた。奴等だったのか。近くに居たなんてひどいじゃないか。早く教えてくれないと。仕方ないなぁ。
手紙の主はヴァレリーだった。クリスは手紙を読み、部下に悟られないよう平穏を装う。
ちょっと長いけどお話をしようか。
クロイス王国とヴェルテュレーヴェ公国がありました。二つの国は仲が良かったのですが十年前戦争をしました。原因は度重なる兵士たちの暗殺のし合い、各国の資源の盗みだそうです。
しかし両国の王は何者かによる仕業と戦争を阻止しようと思いましたが国民がヒートアップし実際に戦争のきっかけを作ってしまいました。
両国の王は密約を交わした後戦争し、当時ヴェルテュレーヴェ公国より弱小国であったクロイス国は瞬く間に滅ぼされ、ヴェルテュレーヴェ公国に吸収、合併。
しかしクロイス王国の幼い王子は合戦の真ん中であったにもかかわらず生きのびたと言う噂があります。めでたし、めでたし。
そう。俺はラッツェル=フォルトナ=クロイス。故郷を滅ぼした奴に復讐を誓った悪魔だ。今はクリスと名乗っているがな。
でも俺は戦争の時にタイミングよく森の外へお使いに行っていた。いつもそばに居るお供も連れず。そこでクロガネっていう傭兵団に連れて行かれた。振り返ると街は戦火に包まれていた。いったいどこのどいつが俺の国を滅ぼしたのかわからなかった。
クロガネの前団長は俺の知らない遠くの港町で俺を一人前に育て上げてくれた。だが、俺の家族が死んだ戦いの事を何一つ教えてくれなかった。周りの人間も知らなかったし、調べようとしても前団長に邪魔された。その後、前団長は俺を置き去りにして帰って行った。
そして時がたち俺は港町でクロガネの団員として活動していた。が、前団長が遠征で死んだと聞き、しかも俺を前団長がしきっていた街の団長として名指ししていた事を知り、つい最近、こちらに来たばかりだった。
しかもその矢先にヴァレリーからの手紙だ。奴が何故俺がクロイスの生き残りだという事実を知ったのかは今問題ではない。復讐相手がヴェルテュレーヴェ公国と教えてくれたことが重要だ。奴は自分の父を倒し、アルトネリアも倒す気だと言っており、手を組まないかと言ってきている。
こいつは知らないのだ。
何であれヴェルテュレーヴェは皆殺しにするという俺の気持ちも前団長が死んだ戦いがシリウス前王の遠征でお前に殺されている戦いということも前団長がマリンに借りを返すまで何があってもアルトネリアに使えろと俺に言っていたことも俺がお前を裏切ることも前団長の残した俺を縛る鎖はお前には当てはまらないと言う事も自分から死の道を選んだことも。
とりあえず戦争云々はほっといてヴァレリーは殺すことにした。
「――――――プレコグニション。」
術式を唱える。簡単に言えば未来見じゃな。ワシの場合は過去の事象を魔法的に処理し推測、未来で起こりうる可能性が高い語を導き出すと言うものじゃ。温故知新、古きを知り新しきを知る。しかも、ワシの専門は過去じゃから、過去見もできんことはない。
「さーて、ヴァレリーは過去に何があったのかのー?……怒り、懐疑心、決断か。」
まぁ想定はしていたことじゃ。おそらくあの会見の事じゃろう。
十年ちょい前に密談があった。王とその側近同士の密談じゃ。クロイスとヴェルテュレーヴェ。当時負けることを確信していたクロイスは息子を生かせること、皆殺しにしない事などを条件に八百長で自国を負かすことを提案したのだ。驚くような提案をヴェルテュレーヴェは約束した。おそらく、反乱分子となる息子を生かした事を根に持っているのだろう。後々災いとなると。その戦争でも、禁じられていた火計や虐殺をヴァレリーはやっていた。他にも誰かが介入したようなおかしな点がいくつかあり、結果的に皆殺しとなってしまった。ワシは密会だけ参加して戦争には行かずこの城に籠っておったから詳しいことはわからんが。
とにかく、奴は前王も殺し、この国を乗っ取る気なのがはっきりした。今回はワシはアルトネリアに味方するとしようかの。
やはり人数はかなり少ないな。大体半分くらいヴァレリーの元へ行ったか。信頼を重んじる騎士はやはりアルトネリアのことが許せなかったか。城の一番手前、白塗りの広場で俺は兵達の前に立ち、腕を組み黙っていた。兵たちはざわざわと不穏な雰囲気をはらませながら集まってくる。
「サーガブリエル。」
「どうした?」
騎士団の一人が駆けよって耳打ちしてくる。
「傭兵団クロガネは脱退者が何名かいるようですが一応我々につくみたいです。あとクリス傭兵団長から伝言で後で借りを返すから会いに行くぞとの事。」
「分かった。」
はっ。と騎士は言い、駆けていく。……そろそろ時間か。
「これから話をする。」
兵士が一瞬にして静まりかえる。兵数で劣っているのだ。士気を上げることから始めねば。
「諸君らは騎士として、主君に裏切られたと言われても間違いではないだろう。だから、腹を割って話そう。私はガブリエル、一人の男として話そうと思う。」
「騎士は主が振るう一本の剣だと私は考えている。剣は振るうものに見合わぬ長さや重さでは振るう事は出来ない。お前達も分かっているはずだ。新人の頃に振れなかった剣も今は振れるはず、人は成長するんだ。」
「話を変えるがアルトネリア様は女として育てば今頃結婚してもおかしくない年だろう。だが、女としての人生をすべて捨て、万一後継ぎ争いが起こってはいけないと民の為を思って男装をし、今まで育ってこられた。自分の身を投げうってまで国を守りとおしたんだ。私はそれを裏切りだとは思っていない。お前たちは恥ずかしくないか? 自分達よりまだ年端もいかない泣き虫な女性を国と言う鎖でがんじがらめにさせてしまった。俺は自分が恥ずかしかった。だが、私も国を思う騎士としての立場から彼女を止めることができなかった。」
「だから俺は君達に頼もうと思う。今、女性だと言う事がバラされたにもかかわらず涙ながらに立ち上がり、父親を殺した実の兄に戦う事を決意した。……成長した彼女に見合う真の剣として、彼女の味方をしてやってほしい。」
俺は頭を下げる。一瞬静寂が続く。しくじったか?
「私は騎士団長についていきます!」
「私もだ!」
「私も!」
「「「我らが女王、アルトネリア様の振るう剣となりましょうぞ!」」」
どうやら杞憂に終わったようだ。兵達の声が大きくなり、掛け声へと変わって行く。頼もしいことだ。これなら背中は預けられる。残念だが、去って行った兵達とは戦うしかない。
少し安堵し、また悪気に追われているとふと隣で声がする。
「サクラを仕込んだハズなんだけどな。無用だったみたいだね。」
クリスだ。クロガネの方は大丈夫なのだろうか。
「ほら。借りを返しとくよ。これを見てくれ。」
そう言って羊皮紙を一枚渡してくる。どうやらヴァレリーからラッツェルと言うものへの手紙のようだ。が……俺は知っている。クリスはラッツと言う名前だと言うこと。前の戦いで密会があり、息子をこの国で引き取るとシリウス前王が約束したこと。クロガネで保護、自由を与えることが決まったこと。シリウス前王から聞いていた。
「ほう、ヴァレリーがお前と手を組むと。」
「俺が復讐をするのは止めないのか?」
「言うまでもなく主君に降りかかる火の粉は私が振り払う。」
「まぁヴァレリーの次だね良かったねー。」
肩をすくめたようなポーズをしている。目は笑っていないが。奴がいつもより雰囲気が違うが気にしない。まずは目の前の敵から集中していくか。足を速め、ラッツを置き去りにして準備に取り掛かる。
「邪魔するぜ。」
「おや、クリスかの。どうやら機嫌が悪いようじゃな。」
ワシがプレコグニションで使った道具をかたづけていると、荒々しいと言うよりかは一周り回ってヘラヘラとしている。そして一枚の手紙をつきつけてくる。……どうやら昔の密会のことのようじゃな。いつかはバレると思っておったが意外と速かったの。
「そう狂気に走りすぎていると痛い目を見るぞ。」
「そうか。……お前には前団長からの遺言で借りを返せと言われているからな。お前が納得するまでと。残念だが前団長の遺言を無下にはできない。どうやったら借りを返せる?」
「残念じゃがワシは死ぬまでお前に貸しを作るつもりは無くての。だから一生お前は貸しを作ったままじゃよ。」
「まるでずっと生き続けるみたいな言い草だな。」
「ほほほ。」
「とにかく俺が死のうともアルちゃんは殺すつもりだから。」
「アル殿は件の戦争とは無関係ぞ。さらに言うと、お主はまだ知らん。」
「何を?」
「件の戦争では何者かが暗躍した。その結果皆殺しの回避は出来ず、女子供まで殺した上に混沌災害まで引き起こされた。元凶であるそいつに復讐するのが筋じゃろう。」
「で?」
「密会があったのは知っておるか?お前の父は自分の国が負けるのを確信しておった。だから奴は最後の最後でヴェレテュレーヴェを後々破滅に追い込むような条件をつけてきよったのじゃ。」
「そりゃ親父も心底憎かっただろうからな。」
「そうじゃないのよ。奴に会ったのは親の愛情だな。奴は自国が負けることを条件にお前を生かせと提言してきたのだ。」
「……つまり俺だけ生かせろ。と。」
「さらにシリウス前王もバカ真面目での。そんな条件飲まずとも勝てるのにこちらで引き取ると言うたのよ。それで命を受けたクロガネがお前さんを拾ったと言う訳じゃ。」
「……。」
「分かるか? お前にはワシへの借りだけではない。シリウス前王、お前の父、さらにこの国の義理、貸しによって生きていると言う訳じゃ。これでも、アルトネリアを殺すと言い切れるかの?」
ワシは意地の悪い笑みを浮かべてしまっていることじゃろう。まぁクリス……いやラッツの気分も分からないこともない。
でもまぁ。ワシが死ぬまでこき使ってやるとするかの。
日は傾きかけていた。
昨日の夜は眠れなかった。
昨日は色んな事があった。ヴァレリー兄さんが生きていたのはいいけど、おそらく兄さんが父上を殺したのでしょう。城を渡せと言われた。でも私はそう言う訳にはいかない。もう少しで街人に向かって演説をしなければならない。民たちが私達に不満をぶつけるのは間違いないでしょう。この身はどうなってもかまわない。民達には納得してもらわなければ。国の為。
「アルトネリア様、お時間です。」
「ありがとう。」
私は騎士に連れられて立ち台の上に上る。見渡すと街の人がたくさん集まってきている。彼らも不安なのだ。私がしっかりしないと。さっと手を上げ、宣誓する。
「皆さん。私はこの二日間後の戦争で皆さんを傷つけるようなことは一切いたしません。」
「そんなこと言っても納得できんぞ!」
「偽ってまで王座についていたではないか。その高価な着物を着ているのは何故だ!」
私は着ていたドレスの一片を破り捨てる。
「私はこんな格好や王座は望んでおりません。それよりも私が真に望んでいるのは貴方達と、この国とずっと居たいと言う事だけなのです。」
「だが……」
「もういいじゃないか。なぜここまでアルトネリア様にさせるんだ!」
街人のうちの一人から声が上がる。
「この人はここまでしてても私達の為に尽くそうとしているだぞ!」
民衆が静まり返る。
「我々はアルトネリア様の為に!」
「「「アルトネリア様の為に!」」」
良かった。上手く行ったみたいだ。
「お疲れ様です。アルトネリア様。日ごろから民衆に慕われているのが良くわかりました。」
「嬉しい限りです。ですが、民には申し訳が立ちません……。」
一瞬うなだれてしまったが、民の前だ。すぐに気を持ち直し民に向かって手を振る。ガブリエルが先導して城へと連れて行ってくれる。街を戦火に包まぬよう私も頑張らなければ。
城の廊下、兵の見張りの届いてない所で私は依頼主と話していた。
「ミストレア。依頼は進んでいるのか?」
「ええ。」
「そうか。ならいい。」
「依頼は絶対ですから。」
「そうだな。依頼は『絶対』だからな。」
そう言ってフードを被った依頼主の顔が見えないはずなのにニッと笑っている気がした。
そのまま男は霧が空中に紛れて消えていくようにどこかへ消える。
「ミストレアー。何も言わずに部屋から出て言ったらびっくりして心臓に悪いのだ―。」
今日も相変わらず彼女はやってくる。何故彼女は感情を持ってこんなにも自由で、のんびりしているのだろう。彼女がうらやましい。
……うらやましい?
「そう。悪かったわね。」
「そーなのだ。で、暇なのだ。何かするのだ。」
私は一体どうしたのだろう?
「そういやミストレアは難しい顔をしているのだ。何かあったのか?」
ちょっと前までは無表情だったけど最近は難しい顔をするようになったのだ。
「いや、何も。」
やっぱり難しい事を考えているのだ。
「ミストレアにそんな顔は似合わないのだ。ほら、にーっ!」
無理やりミストレアの口元を手で引っ張り上げる。最初はミストレアはいやいやしていたが何回も振り回していると馴れてきてなすがままになっているのだ。流石ワタシ。
「本当にどうしてしまったのかしらね……。」
ミストレアが呟く。
「どうかしたのか?」
「何でもないわ。続けて。」
ぼけているのか『続けて』と言ったのだ。にひひ。ミストレアはしまった。というような顔をしているのだが遠慮なくいじってやるのだ。友達だからな!
街の方は戦いに向けて準備を進めており、外は人の喧騒でまみれていた。
さて、明日か。
僕は窓から街を見るのを止めて手元の資料に目を戻す。メイジである僕は戦いの管理、軍略もしなければならない。もう少しでこの部屋に全員集まってくるはずだ。姫さまは勿論全員が納得でき、かつヴァレリーに勝つ方法を見極めるのが僕の仕事だ。
「ほっほっほ。若いもんは大変じゃの。」
「椅子に座ってないで手伝ってくださいよ。」
「ぐー……。」
「寝た真似しないでくださいよ。……ホントに大変なんですから。」
戦力差は二倍に近い。だが、勝機はある。
向こうは数が多いが特に優秀な兵士がいないようだ。質では完全にこちらが上だし、ミストレアはこちらで保護している。本心はミストレアも戦ってくれればいいと思っているのだが、民の前でああ言った以上、前線に軽い気持ちで放りこむことができない。そもそも味方なのかも怪しいところだ。
「失礼します。遅くなりました。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。お疲れでしょうからマリン殿を押しのけて座っておいてください。」
「ソラ殿、アル殿をワシをどかす道具にするなんてひどいぞ。じーちゃんかなしい。」
「そうですか。」
「扱いひどくないかえ!?」
アルトネリア姫殿下が入ってくる。彼女も心労が祟っているのだろう。疲れて少しやつれている。マリン殿も口ではああ言っているが、アルトネリア様の様子を察しているのか椅子を譲り渡す。と言うより押しつけている。そこにさらにガブリエルとクリスが入って来た。
「すみません。戦の準備や傭兵との相談があったとはいえ姫殿下よりも遅れるとは失態。すみません。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。」
「お前らが一緒に歩いているのをみるとぞっとするわい。で、若造二人、椅子持ってきてはくれんかの?爺は立っているのが辛くてな。」
「まだ若いから大丈夫でしょう。」「黙ってろクソ爺。」
「アル殿以外敵じゃぁ!」
錯乱してら。
しかし傭兵もいくらか抜けたらしい。ヴァレリーの元に居るだろう。油断はできない。しかも騎士団の半分を持って行かれたのは厳しい。だがガブリエルの直属の方が練度がすさまじく高い。十分だ。
「おまたせなのだー!」
「邪魔するわ。」
そこに最後の二人であるセレーネーとミストレアが入ってきた。……というよりはミストレアが引きずられてきた。
この二人も外見と違って桁違いの力を持っている。ミストレアはともかく、セレーネーはガブリエルと組ませることで類なき実力を発揮させることができる。
「セレーネー。おじいちゃん座りたいなぁ。座りたいなぁ。」
「? 座ったらいいのだ。 ……?」
マリンは椅子を持ってきてもらいたいのだろうがセレーネーは何もない所……と言うか床を指さしている。地べたに座れだってよ。マリンさん。
あ、悲しそうな顔をして地べたに三角座りしてる。ちょっと笑える。
さて。
ここからが山場だ。
簡単な情報交換をした後、話を切り出す。
「まずはミストレアさんの事から始めますか。」
「じゃぁまず俺からいいか? ミストレア、お前は十年前の戦争の事について何か知っているのか?」
「そう、気づいてたのね。……十年前、ヴェルテュレーヴェとクロイスの戦争の手引きをしたのは依頼主らしいわ。」
「では今回の依頼と言うのはどういったものだったのでしょう?」
「依頼主からあなた。つまりアルトネリアの暗殺を指示されたわ。」
「ほう、ではその依頼主とやらについては喋ってくれんかの?」
「……私も正直良くわからないわ。小さな頃に買われてアーティストの邪紋を、カオスコアを埋め込まれたわ。」
「他に知っている事はないか?」
「残念だけど、特には。……今だから分かるわ。私は許されない事をし、貴方達がそれを許してはいないと言うことも。」
「んー?」
「そうね。貴方がやったことは許されない事だと言う事はわかっている。でもそれは過去のこと。父上が亡くなってしまった事や兄がああなってしまったことは悲しいけれど、変えられない。でも未来なら変えられる。貴方もこれから新しい人生を歩んでいけばいいのよ。マリンも言っているでしょ?エゴに従えって。」
「……。すこし、休むわ。」
「ええ。屋上に行くなら、風邪をひかないようにね。」
後は彼女の意思だ。おそらく彼女抜きでは苦戦を強いられるだろう。最悪の場合は背後からのアルトネリアへ奇襲だ。こうなったら僕たちに勝ち目は無い。
ゆっくりと深呼吸してからこの部屋に集まった皆に視線を戻す。わずかに自分の肩が震えていることのにも気づいている。だが、
勝たせる舞台を整えるのは僕の仕事だ。
「城を捨てます。」
僕がいきなり言い放った言葉に一同は驚き、唖然とする。
そりゃぁ僕も奇抜すぎる手だと思う。初陣でこれとは。無茶苦茶だ。わざわざ城の要塞を使わずして不利に陥るだけだ。もともとこちらが不利な条件の上さらにそんなことをされたらたまったもんじゃないだろう。
「どういうことだ? まさか逃げるとか言うんじゃないだろうな。」
すかさずクリスが噛みつく。
「まさか。まずはミストレアが敵の場合、城にこもっていても姫殿下が暗殺されておしまい、なら城の外に出ても同様です。また、姫殿下は街人に迷惑をかけたくない、巻き込みたくないとお思いのはず。街人にしても同じ。たとえ要塞を壊され勝ったとしてもそれまでに街で戦闘が起こりえる。そうなれば勝っても後々街人の信頼は薄れます。街を戦いに巻き込まないようにするには討って出るしかない。」
「それはとても魅力的な相談なのですが……果たして城を使わずに勝てるのでしょうか。」
「ええ。僕たちの勝利条件はヴァレリーの撃破です。雑兵は無視で構いません。むしろ攻撃しないでください。一気に片をつけてもらいます。」
ここでは言わないが、傭兵団と騎士団で一緒に城を守ったところで普段から仲の悪い彼らがうまく連携できるとは思えない。それぞれ役割を持たせて攻めさせた方が楽だ。
「雑兵を無視しろと言われてもヴァレリーは騎士団などに守られているのだぞ?」
「ええ。だから……」
我ながら無茶苦茶な案だ。だが、後々の事まで考えると賭けに出るしかない。
メイジアカデミー……魔法大学の学部を全て履修した者「虹(フルカラー)色」の魔法使い、しかも主席で卒業した自分の判断に。
――――――――――――――――――――――
GM:さて三日間の準備は終わった?
クリス:さて戦争だ戦争だ(笑)
ガブリエル:じゃぁ後ろが……(ry
クリス:(お前そういう戦略好きだな)
アルト:いいよ。兄貴の首一瞬にしてとっちゃって(笑)
ソラーレ:いいのか妹(笑)
アルト:そうなったら私が覇権を握るのです……!
GM:これアカン奴や
――――――――――――――――――――――
眠れないと思っていたが最近の疲れが溜まっていたのだろう。昨日はすぐに眠りについけた。夢は残念ながら忘れたが、疲れは取る事が出来た。十分だ。
「ガブリエル団長。準備ができました。」
「分かった。昨日のメイジ殿が言われたとおり、五分で終わらせるぞ。」
現在俺達は近くの森で待機していた。ヴァレリー軍が攻軍して来るときに奇襲をかける。
またメイジ殿は五分の短期決戦だと言われた。それ以上かかってしまったならば引けと。いきなり来たメイジにこんな無茶な事を言われるとは。だが、
「五分で。って言われると三分で充分って言いたくなるよなぁ。」
「うるさいぞ。敵に見つかったらどうするつもりだ。」
クリスが横に来た。あながち奴の言ってることにも同意できるが奇襲ではなく堂々と攻めたい気もする。だが騎士団の半分を持っていかれている上、そんな事は言えない。私達が出来る事はいいつけ以上に戦果を出す事なのだ。
「そろそろ時間だ。貴様は遊んでないで待機していろ。」
今回はアルトネリア様も前線に出てきている。つまり背後の城は完全に捨てきっていると言うことだ。城にもどうせヴァレリーの伏兵がいるだろうが、そいつらが来るまで、短くて五分以内に終わらせればいい話だ。
つまり、五分以内に終わらせなければ、姫殿下にも危険が及ぶと言う話だ。
それは兵士たちにも伝わっている。騎士団は皆緊張感を顔にあらわにしているがその中に決意を感じられる。出来るはずだ。
一つ心残りなのはミストレアが昨日の夜消えたことだ。もう考えても仕方がない。
「ガブリエルー! ソラーレからの合図が来たのだー!」
「分かった。今回も宜しく頼むぞ。セレーネー。」
「任せろなのだー!」
「騎士団、傭兵団、狙うはヴァレリーの首のみ! 全軍突撃! 五分とかからず終わらせるぞ!」
「「「応!」」」
掛け声とともに森を抜けだし一斉に草原のヴァレリー軍へと突撃する。
上手く不意をつけたようでヴァレリーの居るであろう本隊の横、左翼の軍の横っ腹へとつっこむ。
が、急に二〜三十メートル先に少女が敵の本体から跳躍、着地した。ミストレアだ。走る勢いを止めてはいけないのだが後続の騎士たちは怯えと絶望で足が止まってしまう。
しかもこちらに銃を向けている。
詰んだか。
そう思ったのもつかの間、ミストレアはふっと笑うと後ろを向いてあの魔法銃を乱射する。一つ一つ狙いは正確で、どんどん敵が倒れていく。
「クロガネ一番乗りぃ!」
どうやらクリスと傭兵団は足を止めていなかった……と言うより元々知っていたかのように突っ込んでいる。おそらく一番乗りがしたかった為隠していたとでもいうような顔をしていた。奴め何かミストレアから聞かされていたな。
敵に集中を戻す。どうやら左翼、本隊は元々ヴァレリーの専属兵士達で構成されているようだ。おそらくメイジ殿の言うとおり前衛に城を出て行った騎士団が居るのだろう。彼らとは戦いたくない。前衛が引き返してくるまでにヴァレリーを討たなければ。
すぐにソラーレとマリンの攻撃系魔法、雷の玉のようなものが城の方から飛んできて本隊に命中する。バリバリと轟音を立て一瞬にして部隊を半壊以上にしてしまう。高度に熟練された魔法は兵士を吹き飛ばし、混乱を呼ぶ。
さらに味方の騎士団と自分の体から淡い光が浮かび、消えた。おそらくアルトネリア様も援護でクレストの力を飛ばしてくれているのだ。体に力がみなぎり、剣を持つ手にさらに力がこもる。
「遅いぞ騎士団長!」
どうやら傭兵団とミストレアが切り込み本隊までの道を切り開いてくれたようだ。左翼は悠長に立て直しを狙っているのか一旦左右に引いている。
「分かっている!」
セレーネーと共に左翼の軍を振り切り駆け抜け、本隊へと到着する。先ほどの魔法をモロに喰らったのか敵の部隊は隊列が乱れ、各々自分の意思で動いているため脆い。
持っていたエストックで半狂乱になって襲いかかってくる兵士の攻撃を弾き、一突きにする。さらにセレーネーを投げ飛ばす。彼女は空中で体の一部を剣に変え、勢いをつけて敵を一刀両断にする。さらに着地し、目にもとまらぬ速さで手を、足を、剣に変え敵兵士を蹂躙していく。その姿はまさに幻、夜闇を斬り裂く月光だった。
「ガブリエルか! 貴様よくもやってくれたな小僧が。私が直々に相手してやろう。」
「一騎討ちと受け取ってもよろしいのでしょうか。」
「聞いたか雑兵ども。しっかりこ奴が討たれるところを見ているがいい!」
そう言って兵を引かせる。どうせこの間に隊列を戻しピンチになったら割り込ませて戦線を戻すつもりなのだろう。だが都合がいい。こいつを討ちとるだけで勝てる。
セレーネーがそれを聞いて走り寄ってきて剣の姿となる。輝く異様な銀の剣がガブリエルによって構えられ、刃の鏡がたじろぐヴァレリーを映しだす。
……一騎討ちだがセレーネーは無機物。騎士道的にもセーフなはずだよな?
そんな事を考えている余裕はなかった。体感で四分は過ぎている。ヴァレリーも雑魚ではない。なかなかの剣の腕前だったと聞いている。邪念を捨て、集中する。
「はああっ!」
ヴァレリーは上段に構えた剣を勢いよく振りおろしてくる。俺は水平に、まさに半月を描く孤のようにセレーネーを振るう。普通なら剣と剣が当たり弾かれるような軌道だ。が、
陽炎が揺らめくようにして軌跡は増え、ヴァレリーの剣を弾き飛ばし、肩にも深々と突き刺さる。呻き声が戦場に響き、足から崩れ落ちる。
一瞬だった。
「お覚悟を。」
俺はそう呟き、ヴァレリーにとどめをさす。周りの兵士達は動揺し、どうしていいかわからず戸惑っているようだ。
「ヴァレリーをこのガブリエルが討ちとった! これ以上の犠牲は望まない! 皆剣を捨てアルトネリア様に降伏するのだ!」
そう宣言する。慌ただしく逃げる者も居たがそれでもあきらめず攻撃してくる者もいる。どうやらクリスも追いついたようで、状況を察すると、クロガネにこの事を全軍に伝えるようにと伝言し、自らも自軍の方に帰って行く。城の伏兵とアルトネリア様の護衛の件についてはこれで問題ないだろう。
前衛の騎士団が戻ってくるのもそれと同時だった。
「アルトネリア様の元を離れた騎士たちよ。そなた等も一旦離れたとは言えヴェルテュレーヴェに仕える身。むやみに命を散らさず投降せよ。姫殿下からの許しも既にいただいている。」
それを聞いた兵士達は肩を落とし、落胆する。私としては許せないが姫殿下の気持ちを無下にできない。しかし彼女は反乱分子を残すなど、父と似て優しすぎる。
これからも大変そうだ。
まったく、大変なものよの。宴のあとの片づけなど。
街はまったく戦争の被害を受けず戦争の後すぐに宴が始まった。城を出て行った兵士達もアル殿に許してもらい……最後までクリスとガブ殿にはぐちぐち言われとったが。
戦果としては圧勝だった。残念ながらヴァレリーの腹心のいくらかは逃げてしまったが先王の遠征でヴァレリーが先王を殺した証拠が出てきて騎士団はこうべを垂れたようじゃ。
今はアル殿も女帝として頑張っているようじゃの。ワシも家庭教師として教えておるが日に日に元気になってきておるでの。ソラ殿もワシの扱いはひどいが色々と努力して街の発展に努めとるそうじゃ。ワシのこともばれなきゃいいけど。
さて、最後にミストレアじゃが、セレーネーと一緒に初等教育をうけとるそうじゃ。成績が優秀なのはいわずもがな、セレーネーの赤点を回避させると言ってスパルタ教育をしているようじゃ。微かに感情の起伏も出てきておる。なかなか面白い子じゃ。……そのせいでよくセレーネーがワシの所へ逃げてくるようになったけど。
「マリンさん、何しているんですか、のんきに酒飲みながら日記なんか書いてないで早く手伝う手伝う。というか今までこの国メイジ実質一人でやって来たって凄いですね。」
「じゃろ?」
「前任さんの事を言っているんです。」
ジト目で見られた。そろそろ怒られそうじゃから手伝う事にしようかの。
まだまだ人生長くなるやもしれん。面白い事は書き残しておかんと忘れるな。
以降のページは空白です。
――――――――――――――――――――――
GM:セッション終了お疲れさまでしたー。
全員:したー。
GM:いやお前ら最初ミストレア牢に入れるって言った時はどうしようかと思ったよ。
ガブリエル:普通そうするだろ(笑)
マリン:残念ながら私の野望は今回出せなかった……
※思いっきりリプレイで書いてます(笑)
クリス:いやPVPしたかったなー。
ソラーレ:洒落にならんからやめろ(笑)
アルト:お姫様は闇落ちせんでよかった(笑)
GM:つかガブリエル途中でクーデター起こすかとか言ってたな(笑)
ガブリエル:既にクーデター起こってましたエンドつか起こしたの姫だし。
アルト:しりません(笑)
マリン:でもヴァレリー一撃だったな(笑)
セレーネー:めっちゃこのキャラ付属品になると強い。
クリス:そんなにかー。
GM:ま、つーわけでこの辺でおしまいー!
――――――――――――――――――――――
どうでしたでしょうか。小説版それぞれの光それぞれの闇。
小説なんて書くの初めてでしたが大変ですね。学校の感想文とか可愛いもんだわ。
稚拙な表現、思いっきり加工した上脚色しました。すみません。でも後悔はしていないだって長かったんだもん(笑)
今回はリプレイではなく小説+@PL会話みたいな感じで書いてみたけどどうなんだろう。読む人全然居ないだろうけどこれで大丈夫だったかな?
さて、此処まで読んでくださりありがとうございました。大体四万字つまり文庫本の二〜三分の一くらいになるのかな。お疲れさまでした。
良ければKHSの皆も色んな動画とかも上げているので見ていってもらえると嬉しいです!ではこの辺で!
最後にキャラの紹介だけ書いておしまいにします。ここまで読んでくださりありがとうございました。
【名前】アルトネリア・ディ・シリウス 【性別】女(男装)
代々ヴェルテュレーヴェ公国を治めるシリウス家の現国王、先王の死によって若くして国王となった。力は弱く特別戦闘能力が高いわけではないが類稀なる容姿と発言力、知略に富んだ頭脳を持ち、その溢れるカリスマで民を、国を導いている。
当然、指揮能力、政治力も優れている。民を第一に考え民衆の声を良く聞き入れるるため民からも大変慕われている。
しかし、本来の『女』という性別を偽り『男』として生活している。それは、代々国王は男でなければならないからだった。本来ならば国王はアルトネリアではなく、兄であるヴァレリーが継承するはずであったが、ある日先王とともに遠征に向かった時に何者かの襲撃にあい先王は死亡、ヴァレリーは行方不明となってしまった。それ以来、アルトネリアは次期国王として、男として民達の前で振る舞っている。ちなみに幼少から男とも女とも取れる容姿だったため、民達には女であるということは気づかれていない。まず今までシリウス家には女は生まれていなかった。
実際に彼女の本当の性別を知っているのは一部の臣下と教育係のジジイ青年くらいだ。そのため、一人でいるときや事情を知っているものとのみ居るときには女の子として振る舞っている。
正義感が強く、人を貶めるような事が大嫌い。なのだが、今の自分の状況が民達を裏切っているのではないかと考え、自分の信念との矛盾に葛藤している。彼女が民からの信頼を失ってしまえば恐らく彼女の心は壊れるだろう・・・
主に魔法を得意としており、その魔法はジジイ青年から教わった。使うのはクレストだけど。
まぁ、その他いろいろ設定考えてるんだけどきりがないから以下略。聞きたいことがあれば何なりと・・・
参考人物:某エロゲのヒロイン(皇女)
【名前】ガブリエル・グリンホリン 【性別】男 【年齢】31
アルの父の代から騎士として仕えていた男。代々騎士としてシリウス家に仕えてきた由緒正しい家に生まれ、幼い頃から騎士としての激しい訓練を積んだ育ち、現在は『太陽の騎士』とすら呼ばれる実力者。度を過ぎた生真面目かつ清廉な性格が祟って、アルの言葉には基本的には絶対遵守するほどの溺愛っぷりだが、親代わりとして心配しているという一面もある。アルが女性と言うことを隠すために対外的な交渉などで矢面に立つことも多いため、話術にも長け、参謀として働くこともしばしば。アルが女性だと言うことを絶対の秘密と考え、余計な詮索を入れようとする相手は容赦なく剣の錆に変えるという覚悟を持ち、基本的には傭兵や金で雇われた人物を信じずに軽んじる。父から受け継いだ自身直轄の騎士団「ペルセウス隊」を率いる。
モデルはガウェイン卿と英雄クー・フーリン
マリン・マージナル
プロフェット/人間/男
「『時は金なり』!儂の財産を浪費してくれるな」
「魔法はエゴぞ」
「寝てよいか?魔力補給がしたいのじゃ」
海色の目を持つ痩身の青年。外見年齢二十代。若々しい白いもち肌が自慢。ただ目の下のクマとジジイ口調で台無しである。
専門は『肉体時間の逆行と低速化』。
言い換えれば、『若返りと若さキープ』である。
アルの家庭教師。結構昔からいる。
一応魔法を中心的に教えており、基礎は叩き込んだ。とはいえ暇を見ると『魔力補給』と称して寝るなど、その勤務態度はあまりよろしくない。
外見不相応のジジイ口調については『時空魔法の影響で、外見よりずっと年食ってるのじゃ』で通している。その真相を知るのは一部の者のみ。
…以下PL情報…
「50年ちょい時空魔法を研究、その後100年ちょい休眠して、それで貯めた魔力で若返り、ってサイクルを2セット。総計300年と少しじゃな。今は三週目の人生よ」とのこと。つまり実年齢は外見年齢+300歳ちょい。サバ読んでるってレベルじゃない。
自身考案の若返り大魔法によって、休眠してまで貯めた莫大な魔力はほぼすっからかん。その長い休眠のせいで知識もうろ覚え。結局魔力や知識は全盛期には程遠く、そこらの魔法使いとそう変わらない。
正体は300年前にメイジスクールを追われたダークメイジ。野望だの真理だのに興味はなく、研究しながらグダグダ長生きしたいだけらしい。
ラッツェル=フォルトナ=クロイス。 (ラッツ)
傭兵団『銕(くろがね)』のトップであり、世界各地で傭兵としての経験をつむ。
現在はアルトネリアの所に傭兵として使えとており、雑用から汚れ仕事まで何でもこなす。裏方面では超有能。
元々の出身は国王の息子だったが、幼い頃アルトの先代?の軍に敗北し逃走。生き延びる為に戦闘方法を学びカオスを身体に取り入れる事に成功。(アーティストとして覚醒)
幼い頃の悲劇は若干しか覚えていないが復讐を誓っており、自分を貶めた領主を探しだして殺すつもりである。(今自分の使えてる主がそれだとは気付いていない)
金は大事。集めておくべきもの。ただし、金で買えないものもある。
『例えば、死んだ者の命とかな。』
【名前】ソラーレ
【クラス】メイジ
【スタイル】エレメンタラー
【性別】男
【年齢】22
【設定】
メイジ・アカデミーの専門課程を終えたばかりの新人で、新たにアルの元へ派遣された。
やや性格が不安定で、真面目な性格と面倒臭がりな性格がよく脳内で戦う。長いものには巻かれるタイプ。
22歳の時に何故かタバコに目覚め、以後愛煙家である。1日1本は吸わないと精神的に不安定になりがち。
ちなみに本当に最近来たばかりなので、国家の事情などはあまり知らない。アルが男装してる事とかも勿論知らない。
【あとがき】
グランクレスト2回めで未だによくわかってないから公式HPに載ってるコアルール斜め読みして作った。
細かい設定は追々考えるかも。キャラの口調とかはセッションしながら考えると思うけど、暗い系にはしたくない。
【名前】セレーネー
【性別】女
【年齢】剣だから年とかないけどガブリエルが封印された台座から解きはなって6年なのだ
【設定】副長がほぼ当日参加で作ったキャラ。非常にバカであるがアイデアと戦闘能力は高い。
基本的にのほほんとしているが本気出せばめっちゃ強い
和名は「月」だったはず(解説はセレーネーとクリスがフール作成その他は個人)
おしまいなのだー!(*^^)ノシ